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山崎 梅酒樽後熟 [ジャパニーズ]

山崎梅酒樽後熟というウイスキーがあります。

山崎梅酒樽後熟
[山崎梅酒樽後熟]

それは、シングルモルトウイスキー山崎を、
梅酒を貯蔵した樽でさらに 2年間熟成させたものです。
バー限定で3000本で発売、価格も高めで 9000円近くするウイスキーです。

それを聞いてまず、そもそも梅酒とは、
その製造の工程において、樽にいれるものではないはず。
なぜそのような樽があるのだろうか、との疑問をもちました。

調べてみると、サントリーは山崎の樽で熟成させた梅酒も売り出しています。

山崎蒸溜所貯蔵梅酒
[山崎蒸溜所貯蔵梅酒]

山崎梅酒樽後熟とは、その梅酒の熟成に使った樽を、再び山崎を熟成させる樽としてもどして使ってできた製品であるように思えます。

整理をすると、
・山崎の熟成に使った樽がある (山崎ができる)
・その樽で梅酒を熟成させる (山崎蒸溜所貯蔵梅酒ができる)
・再びその樽を、山崎の熟成に使う (山崎梅酒樽後熟ができる)

というように、樽の目線で見直してみると、
その変遷には少々ややこしい、いったりきたりの使いまわしの経緯の様子がうかがえます。


この山崎梅酒樽熟成ですが、ふつうにおいしいです。
山崎のみならず、日本のウイスキーには全体として、まろやかさの背景に必ずといっていいほど、果物の甘さやすっぱさの雰囲気を入り交じえて含んでいる印象があります。
この山崎梅酒樽後熟とは、自然な流れでもってその甘さやすっぱさの雰囲気を強調し、より親しみやすい味わいを形にしているウイスキーであるような気がします。

 



 


山崎蒸溜場 2008 [ジャパニーズ]

山崎蒸溜場を訪れました。

それは、京都の傍らの山間に凛として佇む 「和の蒸溜所」 です。
水と緑の国 - 日本が誇る、ジャパニーズウイスキー発祥の地です。

山崎蒸留場とは、日本で最初につくられたサントリーの蒸溜場であり、その創業は 1923年。
場所は、京都から電車ですぐの山崎駅から徒歩で向かえる便利な場所に位置する蒸溜所です。[地図]

山崎駅にある山崎の看板
[山崎駅にある山崎の看板]

山崎蒸溜所 外観
[山崎蒸溜所 外観]

蒸溜所の背後には山がそびえます
[蒸溜所の背後には山がそびえます]

結構険しい山がそびえます
[結構険しい山がそびえます]

雰囲気はしっとりとして落ち着いています
[雰囲気はしっとりとして落ち着いています]

唐突にして立ち上がる煙に、驚かされます
[唐突にして立ち上がる煙に、驚かされます]

山崎はそんな緑の山を背に、茶色の建物がたちひしめく蒸溜所です
[山崎は緑の山を背に、茶色の建物がたちひしめく蒸溜所です]

そして、山崎ウイスキー館に入ります。
山崎ウイスキー館の内部には、光を浴びる山崎原酒の数々がならべられています。

原酒の回廊
[原酒の回廊]

背後からライティングされる原酒はとても神秘的に見えます
[背後からライティングされる原酒はとても神秘的に見えます]

原酒は熟成樽により味個性が異なります。 色も異なります
[原酒は熟成樽により味個性が異なります。 色も異なります]


そして、山崎のツアーが始まります。

糖化層はステンレスと木のあわせ技で
[糖化層はステンレスと木のあわせ技で]

発酵は普通に木で
[発酵は普通に木で]

続いて、蒸溜の部屋へ向かいます。

山崎のポットスチル
[山崎のポットスチル]

山崎のポットスチルは、こうごうしいまでに金色に光り輝いています。
アイラの蒸溜所で見たポットスチルは、ありのままというか、吹きっさらしというか、蒸溜する酒がよければそれでよし、その見た目は着飾らない。 そんな感じのする、荒々しさ感漂うポットスチルばかりである印象があったので、この山崎の金色に光り輝くポットスチルには、ちょっとやりすぎ... との感じを覚えてしまうくらいに、光り輝くものである印象を受けてしまいました。

金色に光輝くポットスチル
[金色に光輝くポットスチル]

山崎のポットスチルには形が 2種類あります。
普通の形のポットスチルと、ふくらみのあるポットスチルの 2種類がありまして、それぞれ、蒸溜の速さに違いがでるので、結果としてそれぞれできる味は異なるそうです。
山崎はその 2種類のポットスチルを組み合わせて作るウイスキーであり、
そのやりかたは、世界的に見ても珍しい蒸溜所であるそうです。

ふくらみのあるポットスチル
[ふくらみのあるポットスチル]

そして、続くは 「熟成」 です。

山崎熟成庫
[山崎熟成庫]

山崎蒸溜所の熟成庫は、心安らぐような木の香りで満ち溢れています。
それは、アイラの蒸溜所ではまるで感じることのできないほどに、穏やかで品のある香りであり、ウイスキーの味の 60% はこの熟成の課程で決まるものであることを考慮すると、自然として、この熟成の部屋の木の香りに山崎のアイデンティティを見出してしまいます。

連なる樽
[連なる樽]

詰みあがる樽
[詰みあがる樽]

そうして山崎の見学は終了。
最後に待つは、恒例の試飲です。

山崎ストレートとそのマザーウォーター
[山崎ストレートとそのマザーウォーター]

試飲では、山崎と、その山崎を仕込む上で使われる水が出されます。
ウイスキーの仕込み水は、マザーウォーターと呼ばれます。
ウイスキーとは、この製造過程の仕込み水であるところのマザーウォーターで割るのが、一番おいしい飲み方であると言われています。 山崎のマザーウォーターは市販では売られていない水であるので、この組み合わせを味わえるのはここ、山崎蒸溜所のみとなります。

山崎の水。 日本の水
[山崎の水。 日本の水]


そのような山崎蒸溜所のありさまを見ていて、一番感銘をうけることは、
スコットランドの文化のものであるウイスキーという異国の酒を、
日本独自のものとして、自らの色によって見事に表現できていることです。

和の庭
[和の庭]

さりげなくして和を思わせる色彩を欠かしません
[さりげなくして和を思わせる色彩を欠かしません]

山崎蒸溜所は、京都の雰囲気をかすかにかもし出しています。

この山崎のような、
・異国のもの取り入れて、
・自らのやりかたで新たに生みなおす。

という製品創造のアプローチとは、代表的な日本企業の実績にも見られるものであり、思いつく例をあげるとすると、ソニーのトランジスタラジオがそう。 トランジスタという、異国の音声増幅の基礎原理技術を、自らの持ちえる小型化の技術を用いてポータブルラジオに仕立て、世界に知らしめる、というような過去の流れを思い出す。(もちろんラジオというのは遠い昔の話ではあるが、ソニーというのはそのようなツギハギの繰り返しでもって、今までを生きているところがある)

海外から得たものを自国に取り入れ、自らの持ちえる技術と感性で熟成させて全体を形作る、という点では共通であるこのサントリーとソニーであるが、長い目で見たときに、特に模倣可能性という点において、その強みの本質というか、持続性のようなものは大いに違うような気がする。

そこのところ、どう違うのか。

技術は真似ができる。
なぜならば、技術とは人が作り出した 1 と 0 の組み合わせのようなものであるので、それは、時間の問題でもって、何かしらのかたちでもって、いずれかは誰かが真似することができる。
一方で、地の利とは、大地のもたらす恵みのようなものであるので、当然ながら、それはどれだけ時がすぎても、その地に住む人以外には、誰にも真似することができない。

「地の利」 とは、アタリマエだがユルギナイ強みを秘めている。

その 「技術」 と 「地の利」 の発する強みの違いとは、その特性にして、まるで 「中距離走者」 と 「長距離走者」 の違いを思わせるようなものであり、その違いとは、長い目で見ていると、ただジワリジワリと広まってゆく一方であるような、トテツモナイ違いであるような気がしてくる。

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文化とは土地に根ざすものである。
文化と密接に結びつく、いわゆる土地に根ざす産業というものは、奥が深く、趣があり、無理がなく、自然としてあるべき姿のようであり、人の情熱を駆り立てやすくして、物事の本質を突いているようでして、結果として息の長いものであるような気がします。
そう考えたときに、土地に根ざす文化を長い時をかけて産業に結びつけた姿を、今見事にして見せる山崎には、心底尊敬のまなざしを覚えてしまいます。

山崎 - 和の情景
[山崎 - 和の情景]


そのようにして、
ふと思えば 「文化と産業の結びつき」 という観点から物事を考えさせられてしまう...
壮大なテーマが歩みきた歴史に込められている。
水と緑の国、日本が誇る、和の色彩に満ちた蒸溜場、山崎。

山崎 - シングルモルトウイスキー
[山崎 - シングルモルトウイスキー]

その存在は、まさにして 「なにも足さない。 なにも引かない。」
ゆるぎない存在感を据える、不動のジャパニーズウイスキーです。

 


サングレイン知多蒸溜所 [ジャパニーズ]

サングレイン知多蒸溜所を訪れました。
知多蒸溜所とは、サントリーのグレーンウイスキーを作るための蒸溜所です。[地図]

それは、工場地帯にひっそりと佇む 「沈黙の蒸溜所」 です。

サングレイン知多蒸溜所
[サングレイン知多蒸溜所]

知多蒸留所は、見学ツアーなどを行っていません。
そこを訪れる人もほとんどいません。
今回はその外観のみを歩いてみてまわってきました。

そのサングレイン知多蒸溜所のいでたち、ご紹介してゆきます。

サングレインへ向かう途中の看板。 その周囲は重工業的です
[サングレインへ向かう途中の看板。 その周囲は重工業的です]

このような工場地帯の中に知多蒸溜場は佇んでいます
[このような工場地帯の中に知多蒸溜場は佇んでいます]

驚くべきことに、知多蒸溜所は工場地帯の真っ只中にあります。
周囲は化石燃料、サイロ、セメント工場などが建ちひしめく工業地帯でありまして、
その中に知多蒸溜場はひっそりと佇んでいます。

知多蒸溜所 案内
[知多蒸溜所 案内]

知多蒸溜所そのものも化学工場のような感じです
[知多蒸溜所そのものも化学工場のような感じです]

ほかの蒸溜所とは、雰囲気が驚くほど違います
[ほかの蒸溜所とは、雰囲気が驚くほど違います]

とてもウイスキーを作っているようには見えません
[とてもウイスキーを作っているようには見えません]

そこは、恵まれた自然のなかにある一般的な蒸溜所とは、かけはなれた世界です。

サングレイン知多蒸溜所 建物入り口
[サングレイン知多蒸溜所 建物入り口]

サングレイン知多蒸溜所の建物はいたってシンプルです。
入り口付近には、精溜塔が飾られれています。

精溜塔
[精溜塔]

この精溜塔とは何かというと、グレーンウイスキーを蒸溜するための機械です。

一般的な蒸溜所でよく見る、蒸溜の機械といえばポットスチル。
一方で、グレーンウイスキーを蒸溜するときは、ポットスチルでなく、この精溜塔を使います。

この精溜塔を使う蒸溜の方式は、連続式蒸溜といいます。
それは、蒸溜酒を大量に生産するための技術であり、ポットスチルによる蒸溜 (単式蒸留) よりも、安価に多くの蒸溜酒を生みだせるのが特徴です。

精溜塔内部
[精溜塔内部]

ポットスチルの印象と清溜塔の印象は大きく異なります。
ポットスチルとは、その色、姿の雰囲気であったり、形の微妙な違いができあがるウイスキーの味に影響をあたえる未知なる要素を秘めたものであることを考えると、なんだかそれは、「神秘」 とか 「芸術」 とか、そういう類の言葉が似合いそうなものである印象があります。
一方で精溜塔とは、 「科学」 とか 「技術」 とか、そういう類の言葉が似合いそうなものである印象があります。

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そうしてできるグレーンウイスキーとは、
おとなしく、クリーンで、主張のすくない静かなウイスキーです。

グレーンウイスキーはそのまま飲まれることはほとんどありません。
モルトウイスキーと混ぜて 「ブレンドウイスキー」 として飲まれるものがほとんどです。
グレーンウイスキーとは、シングルモルトウイスキーのように、その名や個性が表立って現れることのないウイスキーなのです。

・ そのようなグレーンウイスキーは、その特徴から 「サイレントスピリッツ」 と呼ばれます。
・ 対照的に、個性の強いモルトウイスキーは 「ラウドスピリッツ」 と呼ばれます。

「ブレンドウイスキー」 とは、個性の強い 「ラウドスピリッツ」 と、主張の少ない 「サイレントスピリッツ」 を調和させてできるバランスの取れたウイスキーであり、グレーンウイスキーは役割として、その主張の少ない部分をつかさどるものであり、時にそれは、絵画の下塗りにたとえられます。


ブレンドの世界。 思索の世界。
[ブレンドの世界。 思索の世界。]


そのような 「沈黙の酒」 であるサイレントスピリッツ、グレーンウイスキーを、
サングレイン知多蒸溜所は騒然とした工場地帯の中、
ブレンドウイスキーの土台を形作るべくし、日々黙々と蒸溜し続けています。

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ちなみに知多蒸溜所でつくられたグレーンウイスキーは単体でもうられています。

知多蒸溜所特性グレーン
[知多蒸溜所特性グレーン]

山崎蒸溜所で 「知多蒸溜所特性グレーン」 として売られていて、その価格は少々高め。
熟成期間が長いので、サイレントなグレーンウイスキーであるにもかかわらず、
樽の木の落ち着いた香りがしっかりと植わっているウイスキーです。

一方で、サイレントスピリッツならではの静けさは、

・ 口にした後に、砂浜にしみこんでゆく波のように...
・ 広く深く、穏やかに染み渡ってゆくように...
・ まるで、その音がかすかに聞こえてくるかのように...

その主たる特徴である 「静寂」 を根底にして流す。
奥ゆかしさを秘めたウイスキーです。

 


山崎とは [ジャパニーズ]

サントリーのシングルモルトウイスキー、山崎の宣伝ポスターを見て、
言葉にしがたい感銘を受けました。

山崎 - なにも足さない。 なにも引かない。
[山崎 - なにも足さない。 なにも引かない。]

実際にこのポスターを見た瞬間、背筋に緊張が走り、強い衝撃をうけたかと思うと、続けざまに、磁石にひきつけられ押さえ込まれるような安定感にとらわれて、あたかも時がとまったかのような感覚にさらされました。


和の空間の中央帯状に広く堂々と黒を置き、左下部分にさりげなくおかれている山崎のボトルとグラスはその大きさ以上の存在感を放っている。 そして、その堂々と置かれている黒の右上部分に浮かぶようにおかれている 「なにも足さない。 なにも引かない。」 の言葉のつくる不動の世界には、心底恐れ入った感じ、しばらくこちらも動けなくなる感じがしてきます。


ここ最近、スコットランドのアイラ島をはじめ、様々な蒸溜所を訪れては、写真とともにその情景と感想を書き綴ることをしているのですが、そうしてゆくと、不思議とそれぞれのウイスキーの特徴を人の性格をなぞらえてみるような視点が備わってきます。

そうしたときに、この山崎のような存在とは、心底尊敬に値するような存在であり、目指すべきところであるような気がしてきます。

 


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